シン・エヴァンゲリオン 最新ネタバレわかりやすく解説!庵野監督の「メッセージ」を探る。

アニメ

「シンエヴァンゲリオン劇場版を観たけど、よくわからないとこもあったなあ」
というあなた。

この記事では、用語の解説もしながらストーリーに沿って、シンエヴァをわかりやすく考察しています。

「大体話はわかったけど、『エヴァを捨てて大人になれ』『現実を見ろ』ってことでOK?」

さて、それはどうでしょうか?

庵野監督のメッセージについても、掘り下げて考察してみました。

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はじめに

この記事ではシンエヴァのあらすじを最初から最後まで説明していますが、すべての考察を盛り込むととんでもない文字数になるので、より深い考察については別の記事を何本か作る予定です。

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ここからはストーリー全体をScene1~6に分けて、詳しく考察していきます。用語の解説もしながらなので、わかりやすいですよ。

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シンエヴァの全ストーリーをネタバレ解説!

ヴィレが「アンチLシステム」でパリを救う

OP曲は水前寺清子さんの『真実一路のマーチ』。
この曲の歌詞はシンエヴァのストーリーとシンクロ率∞です。詳しくは別記事でとり上げる予定。

最初の場面は、真っ赤に染まったパリ。
新劇場版『Q』でも大地や建物が真っ赤に染まっていたと思いますが、これは「コア化」と言って使徒の赤い「コア」部分に「汚染された」ような状態です。

『Q』のサードインパクトによって「汚染」された土地では、人間をはじめ、生命体は生きていけません。

そんな「汚染されたパリ」を、「ヴィレ」が救おうとするところから始まります。

「ヴィレ」は『Q』に登場した、ミサトさん率いる軍事組織ですね。
人類を守るために、碇ゲンドウ率いる「ネルフ」と戦っています。
(「率いる」と言っても、ネルフはゲンドウと冬月の二人ぼっちですが…)


パリを汚染から救うのは「アンチLシステム」。大きな柱のような機械で、これを街にぶっ刺して注射器みたいに浄化するイメージです。

汚染濃度の高い状態を、作中では「L結界密度が強い」と言い、「アンチL」とは「L結界密度を下げ、クリーンにする」という意味でしょう。

「アンチL」システムの柱の上で、プラグスーツを着たマヤと、その他ヴィレの男性職員数名がパソコンを開いて作業しています。
「アンチL」システムを発動させるための、プログラミングのような作業と思われます。

そこへ、空から「44A(フォーツーエー)」という量産型のエヴァが現れます。ネルフの刺客です。ブーメランにサキエルの顔がついてるみたいな姿で、隊列を組んで飛んできます。

44Aに立ち向かうのは、マリが乗った8号機(ピンクのエヴァ)。


両腕にガトリングガンみたいなのをつけて、空中戦をくり広げるマリ。かっこいい!!

大量の44Aの後に登場したのは、陽電子砲というでっかいキャノン砲を備えた44Bと、44Bに電力を供給する4444C(フォーフォーシー)群。44Bがビームを発射。めちゃくちゃ強い。

「アンチLシステム」の作業には時間がかかり、男性職員たちが慌てています。
マヤだけは彼らを「あきらめるな!」と叱咤し、手を休めません。「これだから若い男は……」とぼやくマヤ。彼女の頭には、シンジが浮かんでいたのでしょうか。

一方、マリは44Bに壊されたエッフェル塔を44Bにぶっ刺します。男前すぎる。

みんなの頑張りあって、「アンチL」が無事発動。赤い街が元の色に戻っていきます。

ここでマリが「迎えに行くから待ってなよ、ワンコくん」とシンジに向けた言葉を放ちます。先にネタバレしちゃうと、レイ、アスカ、マリの三人のヒロインのうち、本作で最後にシンジと結ばれるのはマリです。


この発言の時点で、マリENDが予想できたという人もいるかもしれませんね。

マリについてはこちらの記事で、掘り下げて考察しています↓

シンエヴァ、マリの「長い髪」から読み解くキャラクター像。イスカリオテのマリアとは?

第三村での、三人の生活。S-DATにこめられたレイの「意志」

シンジ、レイ、アスカの三人が、赤く染まった日本の大地を歩いています。『Q』のラストからのつづきですね。

シンジはすっかり抜殻のようになっています。『Q』で自分がサードインパクトを引き起こしてしまったこと、カヲルくんの死……心の傷があまりに深すぎるのです。アスカはそんなシンジにイライラした様子を見せます。


体力の限界だったのか、やがて気を失うシンジ。そこへある男性が現れます。この後明らかになりますが、この男性は大人になったケンスケです。軍事オタクのメガネの男の子ですね。彼がシンジを助けてくれます。

シンジが目覚めると、そこは見知らぬ天井。犬と子供がシンジをのぞきこみ、最後に現れたのは、大人になったトウジ。
医者になった彼がシンジの手当てをしてくれていて、シンジはトウジが廃校舎を利用して仮設した病室で寝ていました。

トウジが暮らしているのは、サードインパクトを生き延びた人々が集まって暮らす集落、「第三村」。

「KREDIT(クレーディト)」というヴィレ管轄の組織が、集落の生活支援を行っていることが明かされます。他の都市とのネットワークを築き、物資のやりとりを行って助けあう。ミサトさんが作った組織です。

「KREDIT」という名前には、ミサトさんの深い願いがこめられているように感じました。これについても別記事で考察予定。

場面はトウジの家での夕食へ。床に座り、ちゃぶ台を囲んで食べる、ホッとする食卓の光景です。シンジとレイもそこに招かれていますが、シンジは完全に心を閉ざしていて、食事を食べません。


おじいさん(トウジのお父さん?)が、シンジを叱ります。貴重な食べものなのに、一口も食べないとは何事か、と。シンジはそれでも無反応。でもトウジはそんなシンジの様子にも、理解を示します。

奥の部屋では、トウジの妻がツバメという赤ちゃんにお乳をあげています。妻はかつての同級生、委員長です。二人のそばにはレイがいて、レイはツバメとの触れあいのなかで、「これが、かわいい」とつぶやきます。

レイは新劇『序』『破』において、人との交流の中で感情が育ち、人間らしくなっていましたが、『Q』では「その」レイが消えてしまい、「綾波タイプの初期ロット」、つまりクローン人間である「別の」レイになっていました。


シンエヴァのレイは「別の」レイ、つまり感情が豊かになる前のレイであり、しゃべり方もロボットのように途切れとぎれです。レイ自身も、いまの自分が『序』『破』の自分とは別物だとわかっていて、私は綾波レイじゃない、何をしていいのかわからない、といったことを口にします。

それに対してトウジの妻は、「綾波さんのそっくりさん」「自分で思うことをすればいい」と答えます。

この台詞は大事だと思います。「自分の意志で選択し、行動する」ことの大切さを、エヴァはシリーズを通して伝え続けてきたからです。

場面が変わって、ケンスケがシンジを夜の散歩へ連れ出します。ケンスケは精神的に大人になっています。程よい距離感でシンジを観察しつつ、きちんとシンジの気持ちを考えて、こんなことを言います。

「学生時代はケンカばかりだったトウジと委員長が結ばれたのは、サードインパクトの影響が大きかったんだ。サードインパクトも悪いことばかりじゃなかった」

シンジのサードインパクトに対する罪悪感を、少しでも和らげようとしたのでしょう。優しい言葉です。でも、シンジは答えません。

ケンスケはシンジを小屋へ導きます。アスカが一人で暮らしている小屋。アスカは入浴後で素っ裸ですが、シンジもケンスケも反応しません。ケンスケはさらっとアスカにタオルをかけてあげます。どこまでも大人です。


アスカの裸には見向きもしなかったシンジですが、アスカの首のDSSチョーカーを見た瞬間、嘔吐します。DSSチョーカーといえば……そう、『Q』でカヲルくんの首を吹っ飛ばしたあの黒い首輪ですね。シンジの脳裏に、カヲルくんの死がフラッシュバックしたのです。

一方、レイは第三村での生活をはじめます。トウジの妻から、「おやすみ」「おはよう」はおまじないだと教わります。「おはよう」は「今日もみんな一緒に生きていこう」のおまじないだと。

そして朝から、第三村のおばさんたちに混じって田植えをはじめるレイ。はじめての仕事。自然とのふれあい、充実感。女の子からは、仕事を手伝ってくれて「ありがとう」という言葉も教わります。

仕事のあとは、おばさんたちと一緒にお風呂。「LCLと違ってぽかぽかしてる」。かわいい。そして、泣ける台詞です。『破』でシンジの味噌汁に「ぽかぽか」していたあのレイが、戻ってきたかのような……。

それに比べてシンジとアスカは……。ろくに食事もとらず、塞ぎこんでばかりいるシンジに、ついに激昂するアスカ。シンジを引きずり倒し、馬乗りになって無理やり口にレーション(保存食)をねじ込みます。ここのアスカの説教は冴えわたりすぎてて最高でしたね。

アスカはこのとき、睡眠が必要なく、食べものもいらない、水だけで生きられる体になっています。これは「エヴァの呪縛」によるものか、それともアスカが使徒化しているためか。


『破』の3号機起動実験中に、アスカは使徒に侵食されています。内部に使徒の力を宿しているからこそ、汚染された赤い大地を歩いても平気なのでしょう。

アスカ目線だと、食事ができるのにとろうとしない、人間なのに生きようとしないシンジに怒りを覚えるのもわかる気がします。

シンジは徹底的にいじけていて、小屋を出ていきます。アスカには何も言い返せません。図星のド正論で、返す言葉がなかったのでしょう。ひとり、湖の見える廃墟に行って眠るようになります。

レイは第三村のおばさんたちに、「名前がないと呼びづらい」「名前がないなら、自分でつけたら?」と言われます。そしてアスカの元へ行き、シンジの行方を尋ねます。

レイがシンジに対して抱いている感情は、ネルフによってそう設定されたものだとアスカは言います。「それでもいい」とレイ。仕組まれたものであっても、いま自分が感じている本心だから。「自分の意志」を肯定する。

ここでは使徒化する自分にひとり悩んでいるアスカと、
人との関わりのなかで人間化したレイが、鮮やかに対比されていると思いました。

レイはシンジにS-DATとレーションを渡しにいきます。S-DATは小型音楽プレーヤー、アニメ版から登場している重要アイテムです。ゲンドウがシンジに残した唯一のもの。


シンジにとっては、外の世界をシャットアウトするための道具ですが、それをレイがシンジとのコミュニケーションのために渡すのが、感動的だなと思いました。
シンジはS-DATをはねのけます。でもレイが居なくなったあと、泣きながらレーションを食べます。

一人のシンジに、レイはたびたび会いにきます。アスカもたまに見にきてる。やさしい。ケンスケがそんなアスカのやさしさに気づいてるシーンがあって、個人的にツボでした。

ある日、ついにシンジが自分の気持ちをレイに吐露します。自分がなにもかも壊したのに、なんでみんなこんなにやさしいんだ。やさしさが辛い、と。
碇くんが好きだから」とレイ。シンジ、号泣。俺も号泣。

レイの愛でシンジはようやく立ち上がります。ケンスケの仕事を手伝うのです。ケンスケは水質調査など、第三村のインフラに関わる仕事をしているようです。生活を成り立たせる、命の水だ、と湖を指して言います

ケンスケからは、「封印柱」というスティックみたいな装置が結界化を防いでいる、という説明もありますが、それがいつまでもつかはわからない。
トウジの妻は、「今日がいちばん若い」とレイに言います。

いつ終わるかわからないからこそ、今日をせいいっぱい生きる。第三村の人たちは、そんな気持ちで暮らしているのでしょう。

レイは「自分がここにいるために、名前をつけてほしい」とシンジに頼みます。でも、レイには時間がありません。手首が赤くなり、システムエラーのような状態で倒れてしまいます。


レイの「命の水」は、LCL。エヴァとパイロットを接続する液体。私はネルフでしか生きられないのだ、とレイは悟ります。いつ終わるかわからない命

シンジはケンスケに連れられて、ミサトさんと加持さんの息子に会います。そして、ケンスケから話を聞きます。
加持さんはサードインパクトから人類を守るために死んだ。息子は両親が誰なのかも知らない。ミサトさんは人類を守る使命のために、あえて息子を遠ざける判断をしたのだと。

レイはある晩、ツバメを見て泣きます。「これが、さびしい……」
ツバメは「家族愛」の強い鳥で、「故郷への愛」を表すとも言われます。

レイは故郷であるネルフと、家族であるゲンドウを思い出したのでしょうか。
それとも、第三村という「新しい故郷」と「家族」への別れを悲しんだのでしょうか。

翌朝、トウジの妻が起きてくると、レイから短い置手紙が。「おはよう おやすみ ありがとう さよなら」それだけ。「さよなら」は「また会おう」のおまじないだと、トウジの妻はレイに教えていました。レイはどんな気持ちでその言葉を書いたのか……。

レイは最期に、シンジに会います。シンジはレイに頼まれていた名前、考えたけど、思いつかなかった、「綾波は綾波だよ」と言います。
「ありがとう。考えてくれただけでうれしい」とレイ。シンジにS-DATを渡し――バシャン!とLCLになって、消えてしまいました。

儚い最期でしたが、レイはけっして不幸ではなかったと信じたいです。これまでのシリーズにおいて、クローン人間であるレイは、自分のアイデンティティがわからないことに苦しんでいました。でも、第三村での生活から彼女は、「自分」を得ることができた。「自分の意志」でシンジとつながり、想いを伝えることができた。

「綾波は綾波だよ」。レイがレイであることを証明するその言葉に、きっと彼女は救われたはずです。

そして、レイの想いがシンジを動かします。シンジはアスカとともに、ヴィレに戻る決意をするのです。

南極で戦うヴィレVSネルフ。エヴァ・インフィニティ、ネブカドネザルの鍵、人類補完計画とは?

ヴィレの戦艦(ヴンダー)では、ミサトとリツコが加持の計画について話しています。加持の目的は、人類だけでなくあらゆる生命種を「方舟」に保存し、人類補完計画によって地上の生物が滅んでも、宇宙へ生命を逃がすことだったと。

しかし、結局はサードインパクトの際、人類という単一の種を生かすために加持は自らの命を犠牲にします。「彼は自己矛盾の人だった」。

ミサトさんも、「理性」と「情」のあいだで悩んでいる「自己矛盾の人」なんですよね。『破』のラストで、ミサトさんはシンジに「いきなさいシンジ君! あなた自身の願いのために!」と呼びかけます。
これがニアサードインパクトを後押ししてしまったのではないかと、ミサトさん自身責任を感じている。リツコもそこを指摘します。「ミサトが情動に振り回されると、ろくなことがない」と。


だからミサトは「理性」の象徴であるバイザーをかけて、「感情に振り回されない大人」としてふるまっている。でも本当は「情」の人なんです。『Q』でも処分すべきシンジを殺せなかった。ずっと彼のことを想っている。そこがすごくグッときました。「自分には母親の資格がない」という、息子への台詞も。

そして、ヴィレは最後の戦いに向かいます。南極のネルフ基地に眠る、エヴァ13号機を強襲する「ヤマト作戦」。南極へ向かう前に、宇宙へ加持の「方舟」を放流します。

出撃前に、アスカはシンジに問いかけます。なぜ自分がシンジに対して怒っていたかわかるか、と。「あのときなにも決めなかった。責任をとろうとしなかったから」とシンジは答えます。「少しは大人になったってわけね」とアスカ。
ここにも、「自分の意志で決める」「決めたことに責任を持つのが大人」というメッセージが響いています。

アスカは『破』でシンジがつくったお弁当がおいしかった、と話します。「昔はシンジが好きだったんだと思う。でももう大人になっちゃった」。切ない……。


ヴィレは南極に到着します。冬月の艦隊に襲撃を受けますが、なんとか切り抜けながら、地下に潜行。そこは「エヴァ・インフィニティ」と呼ばれる無数の赤いエヴァ量産機のような生命体に埋め尽くされた空間です。

エヴァ・インフィニティ」とは、人類補完計画によって人間を進化させた生命体と思われます。人間は「知恵の実」を持っているが、使徒の「生命の実」を持っていないため、種としては不完全な存在である。そんな人間が「改良」されて、使徒やエヴァのような無限(インフィニティ)に等しい生命を持つに至ったのがエヴァ・インフィニティでしょう。

インフィニティの底には、赤い十字架に磔にされたエヴァ13号機がいます。13号機は初号機にそっくりな見た目をしていますが、別物です。『Q』でシンジとカヲルが乗ったエヴァですね。


新2号機に乗ったアスカと、8号機に乗ったマリが出撃。アスカが13号機の元へ向かい、エヴァの起動を止める「停止信号プラグ」で13号機を貫こうとしますが、新2号機のATフィールドに阻まれます。

これに対して、アスカは新2号機の裏コード「ビースト」を発動し、左目の眼帯をとります。左目からは小さな「封印柱」が排出され、アスカの中に封印されていた使徒の力が解放されます。これに伴い、2号機の姿も怪物のように変貌。

ここは震えました。あれだけ「自分が使徒化すること」を恐れていたアスカが、自ら使徒化を選ぶんですよ。アスカは自分のために生きている人物だったけど、ここで自分を犠牲にする。本当に大人になったんだと思いました。めちゃくちゃかっこよかった。


しかし、アスカの奮闘も空しく、13号機の「もう2本の腕」が動いて、新2号機を捕まえ、3本目の腕が首からエントリープラグを引きずり出します。そう、13号機ってダブルエントリーシステムで、腕4本あるんですよね……。

「ゲンドウの狙いは、使徒化した姫(アスカ)か!」と気づくマリ。新2号機のエントリープラグ内に、「式波タイプ」(オリジナル)のアスカが現れ、アスカを取り込んでしまいます。

一方、ヴンダーにはエヴァMark.09が現れ、船を侵食して乗っ取ります。船の上にゲンドウが登場。ミサトとリツコがゲンドウに対峙し、リツコは即座にゲンドウを銃で撃ちますが、頭を撃っても死にません。

ゲンドウの目を覆っていたバイザーが壊れると、その下は燃える十字架のような模様になっていて、「『ネブカドネザルの鍵』によって、人であることを捨てた」のだと語られます。

ネブカドネザルの鍵」は、これまでのシリーズの情報から考察するに、「天国へ至る鍵」のようなアイテムと思われます。「天へ至る」とは、「神になる」こと。具体的に言うと、人類が「知恵の実」に加えて「生命の実」を得ることでしょうか。だからゲンドウは撃たれても死なない。

「知恵の実」「生命の実」は旧約聖書の『創世記』からきています。人間は「知恵の実」を食べるという「罪」を犯したせいで、神の怒りを買い楽園から追放されます。

「ネブカドネザルの鍵」は楽園への扉を開ける鍵なのでしょう。実際、ゲンドウが望んでいるのは楽園、「永遠の平穏」に至ることです。この場面で彼は「人類補完計画」の概要を語ります。
セカンドインパクトは「海の浄化」、サードインパクトは「大地の浄化」、そしてこれから起こるフォースインパクトが「魂の浄化」だと。

「浄化」というのは、「人類の原罪を洗い清めること」なのだろうと思います。「原罪」とはアダムとイヴが知恵の実を食べて以来、全人類が生まれながらに背負っていると言われる罪のこと。楽園へ至るために、原罪を浄化する必要がある。

浄化された魂が「エヴァ・インフィニティ」という肉体(器)に宿ることで、人類は「知恵の実」を失い、代わりに「生命の実」を得ることで、完全な生命体として「補完」される。これが人類補完計画。

僕はずっと赤い大地を「汚染された」と呼んできましたが、ゲンドウからするとそれが「浄化」なのだから皮肉なものですね……。

計画の達成のために、ヴンダーに保管されている初号機をよこせとゲンドウは要求します。

ヴンダーの中では、シンジがゲンドウの到来に気づき起き上がります。このとき、シンジの目が紫色になります。初号機の中に溶けている母ユイが、シンジを呼んだのではないかと思います。

シンジはゲンドウの元へ向かい、「父さん」と呼びかけますが、ゲンドウは背を向け、背後に控えていたエヴァ13号機に取り込まれます。

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シンジ、初号機に乗ってマイナス宇宙へ。「母」との和解、父との戦い。ゴルゴダオブジェクトとは?

ゲンドウと13号機が向かった先は、「ガフの扉」の先の「マイナス宇宙」。「ガフの扉」は「ガフの部屋」に通じるもので、「ガフの部屋」とは神の館にある、「の住む部屋」のことです。

「マイナス宇宙」は虚構の世界、精神世界のこと。自分の思い描く虚構の世界で、亡き妻ユイのに再会することがゲンドウの目的。
「ネブカドネザルの鍵」は、「ガフの扉」を開ける鍵という解釈がしっくりきます。

ヴンダーではマイナス宇宙へ向かうことができません。そこでシンジが、初号機に乗ってマイナス宇宙へ行くことを提案します。

ミサトさんはシンジの首に、DSSチョーカーをつけます。『Q』ではシンジを縛り、支配する「無理解な大人」と、「未熟な子供」のシンジを象徴するアイテムだった首輪の意味が、180度転換します。
ミサトさんはシンジを認め、一人の大人として信頼を託す。シンジはその責務を引き受ける。大人としての「契約の証」。

ミドリ(ピンク頭の子)とサクラ(トウジの妹)が現れ、シンジをエヴァに乗せようとしているミサトさんに反対します。二人はシンジに銃を向け、サクラは泣きながら「恩人でも仇でもあるシンジさん」に対して、どうしていいのかわからないと語る。サクラはシンジに発砲。ミサトさんがシンジをかばい、お腹に銃弾を受けます。ミサトさんのバイザーが落ち、素顔があらわになります。

ここはリツコがゲンドウを撃ち、バイザーが落ちたシーンと対比されているように思いました。理性の象徴であるバイザーが外れたとき、ゲンドウの素顔は「人をやめていた」。でもミサトさんの素顔は、「情を持った人間」の顔でした。

任務に立とうとするシンジに、素顔の彼女が語りかけます。「父親に息子ができることは、肩を叩くか殺すことだけ。加持の受け売りだけどね」。
なんという名台詞。母親になったミサトさんが発するからこそ、重い言葉。

殺す」は大人としてのけじめ。「肩を叩く」は家族としての情。その二つが重なりあっている、ミサトさんという人を体現するような言葉、それが「加持の受け売り」というのもたまらないですよね。やっぱり加持さんほどミサトさんを理解し、愛していた人はいなかったんだろうと思います。

シンジは、ミサトさんの息子さん、すごくいいやつだったよと返します。息子の顔は、シンジにとてもよく似ていたと思います。このときのミサトさんの目には、シンジと息子が重なっていたことでしょう。

「いってきます」「いってらっしゃい」それは家族が交わす「おまじない」のことば。涙腺崩壊です。

マリの乗る8号機が、シンジの乗る初号機をマイナス宇宙へ導きます。「きみがどこにいても迎えにいくよ」とシンジを送り出すマリ。

シンジと初号機のシンクロ率は、ゼロ。いや、それに限りなく近い数値……「無限(インフィニティ)」だ、という説明が入ります。

13号機の起動のために使われていたレイと、シンジは対面します。短い言葉を交わしたあと、ついに13号機、父ゲンドウとの戦いへ。

戦いの舞台は、シンジの過去の記憶をリピート再生するような世界です。これは「ゴルゴダオブジェクト」という「現実世界と虚構世界(マイナス宇宙)を接続する」アイテムによってもたらされたもの。

「ゴルゴダ」と言えば、イエスキリストが十字架にかけられて死んだ「ゴルゴダの丘」です。


・イエスの死によって人類の原罪は浄化され、救済される。
・その後イエスは再生し、人類を天国、神の国へ導く。
これがゲンドウの目的と重なり合っている、というのが僕の考察です。

・原罪の浄化と救済=人類補完計画
を行った上で、ゴルゴダオブジェクトを使い、
・神の国=ゲンドウの理想の世界(マイナス宇宙)
と、現実世界を接続、同化させる。現実世界を理想の世界へと、「再生」、「再構築」すること

シンジの記憶のリピートは、初めて初号機と向かいあった場面から始まります。ゲンドウが上から、神のようにシンジを見下ろす。

マイナス宇宙は人間には認識できないから、認識可能なように、シンジの記憶を使って見せている、と説明するゲンドウ。「初号機を渡せば、お前も母に会える」しかしシンジは拒絶します。「ムダな抵抗を試みるか。だから子供は嫌いだ」とゲンドウ。

第三新東京市で、希望の槍であるカシウスの槍を持った初号機と、破壊の槍であるロンギヌスの槍を持った13号機が激突。ここから場面が次々に移り変わり、TVアニメ版に出てきたいろんな場所で、二人が戦います。


学校の教室とか、レイの部屋とか……特におもしろかったのは、ミサトさんの部屋で戦ってるところですね。小さくなった二体のエヴァが、食卓のごはんを吹き飛ばしながら槍を突き合わせる。エヴァって壮大な物語だけど、こうして観るとただの親子喧嘩だな、と思いました。笑 

戦いはゲンドウの方が優勢です。13号機は初号機に同調して、同じ動きができる。シンジは動きを読まれているから、勝てないのかもしれません。

アディショナル・インパクトと「意志の槍」。S-DATがつなぐ、父と子の絆

ヴィレのメンバーはゲンドウの計画を止めるために、「ガイウスの槍」という3本目の槍をつくります。冒頭のパリの場面で出てきたマヤ+男性職員が作業をするのですが、絶望的な状況にあるにも関わらず、男性たちがとても前向きに、やる気を見せます。それに対してマヤが、「これだから若い男は……」と前と同じ台詞をくり返す。

ここも上手い台詞だなあ~と。「(若い男は)ちょっと見ぬ間にぐんぐん成長する」という、プラス評価の台詞に転換してるんですよね。やっぱりシンジが重ねられてるように思いました。

シンジとゲンドウは、戦いをやめて、対話をはじめます。マイナス宇宙は精神世界なので、暴力で戦っても勝敗はつかないのです。ゲンドウは「アディショナル・インパクト」を起こそうとしていると説明します。それは「虚構と現実が溶けあう」ことだと。

「アディショナル」とは「追加の」という意味。人類補完計画によって、すべての魂が一つになります。それに「追加」でゲンドウがやろうとしているのが、自分自身をインパクトの「依代」とすることで、「依代」となった人間の理想通りに、世界を再生させること。理想の虚構世界に、現実世界を同化させる。「ユイの魂と永遠に一つになる」という理想を叶えるわけですね。

ゲンドウとシンジがかつてネルフ地下にあったセントラル・ドグマへ下りていくと、十字架にはりつけにされた黒いリリスがいます。ゲンドウはそれを「エヴァ・イマジナリー」=「虚構としてのエヴァ」と呼びます。


「エヴァ・イマジナリー」の顔を覆っている仮面が落ちると、そこには巨大なレイの顔が。「イマジナリー」はレイの頭部に姿を変えて、どんどん大きくなっていき、「ガフの扉」を超えて現実世界へ。

「イマジナリー」=虚構が、現実を呑みこみ、現実世界のエヴァ・インフィニティたちは首のない白いレイの体へと変身していきます。ゲンドウの理想どおりに、現実が書き換えられていく――アディショナル・インパクトの発動です。

巨大なレイの頭部と言えば、旧劇場版の補完計画発動の際にも登場しましたね。頭は心、精神のありかですから、「みんなの魂(心)が一つになった」=「巨大な頭」ということかと思います。首のない白いレイの体は、「全人類の頭(心)が一つになったから、一人ひとりの頭(心)はもういらない」という意味。

その様子を、ネルフの戦艦にいる冬月が見ています。冬月の背後に、マリが登場。冬月は彼女を「イスカリオテのマリア」と呼びます。(この謎めいた呼び名については、下記の記事で考察しています)

シンエヴァ、マリの「長い髪」から読み解くキャラクター像。イスカリオテのマリアとは?

艦内はL結界密度が強すぎて、冬月はLCL化して消えてしまいます。最期に彼は、マリが欲しがっていたエヴァMark.10〜12を彼女に与え「ユイ君、これでいいんだな」という言葉を遺します。

冬月はずっと迷っていたんだろうな、と思います。シンジの目の前でレイが死んだことについて、冬月はゲンドウに「息子に自分と同じ喪失を味わわせるのか」と言っていますし、ネルフを襲撃にきたヴンダーを迎え撃つ際には、「もう少しだけ、碇のわがままに付き合ってやってくれ」と口にしています。
ゲンドウのやっていることに、疑問を抱きつづけている。

あまり胸中を語らず、圧倒的な知力でヴィレを翻弄する冬月は、達観したキャラクターに見えますが、「これで良かったのか」と苦悩しつづけていた……わずかな台詞で、こういった深みのある人物描写をするのも、エヴァの魅力だよなと再認識。

ヴンダーでは「ガイウスの槍」が完成します。「だれかがこれを確実に発動させなければ」と言って、ひとり船に残るミサトさん。ずっと被っていた帽子を脱ぎ、あのロングヘアーを露わにして……。きれいでかっこいい、使命を果たす「大人」のミサトさんです。サードインパクトから人類を救うために、犠牲になった加持の面影が重なりました。

シンジはゲンドウとの対話を試みます。「父さんのことが知りたかった」。シンジが歩み寄ると、ゲンドウのATフィールドが発動。


「自分はシンジを恐れているのか」と、ゲンドウは驚きます。シンジがゲンドウのATフィールドをこじ開け、S-DATをゲンドウに渡します。心を閉ざすシンジに、かつてレイがそうしたように。

S-DATはシンジにとって、「自分と他人を遮断する」ものでした。でも同時に、「ゲンドウとの接続を求める気持ち」の表れでもあった。レイがシンジに、シンジがゲンドウにS-DATを渡すことで、「遮断」の象徴が「接続」へと変わっていく。感動的な場面です。

そして二人は、夕日の差しこむ電車にいます。アニメ版でシンジが独り黄昏れ、憂鬱に沈んでいた電車。そこにゲンドウと向かいあっている。「父さんも僕と同じだったんだね」とシンジは言います。

語られるゲンドウの過去。ゲンドウもまた、親の愛情を知らず、幼い頃から孤独な少年でした。「人はみんなその時々で言うことが違う。嘘を言っているわけではない。ただ、時によって考えが変わるだけだ」。だから人は、信じられない。
白黒の線画で描かれるこの回想シーンは、ゲンドウの人生がいかに「色の無い」ものだったかを示しています。

信じて裏切られ、傷つくことを恐れた彼は、「知識を得ること」と「ピアノを弾くこと」に慰めを見出します。知識と音楽は裏切らない。完結していて、美しい。ゲンドウの「永遠」を求める気持ちは、子供のころからずっと変わっていなかった。人のように変わることのない、永遠に美しいもの――

でも、ユイとの出会いが、そんな彼の人生観を一変させてしまいました。ユイの愛が、何より大切なものになった。彼女との再会のために、人類補完計画を遂行した。しかし、ユイがどこにもいないことに、彼は気づきます。「私は私の弱さゆえに、ユイに会えないのか」

「弱さを認めなかったからだと思うよ」そう答えたのは、幼い子供の姿になったシンジ。かつてゲンドウに捨てられ、泣いていたころのシンジです。

ゲンドウは、シンジを愛していなかったわけではありませんでした。ただ、父親としてどう接していいかわからなかった。向きあうことが怖かった。ユイに再会する目的のために、シンジを利用することも間違っていると思った。シンジを自分から引き離すことが、償いだと……。幼いシンジを電車に乗せる前、最後にシンジを抱くゲンドウの姿。

現実世界では、ヴンダーに乗ったミサトさんが、巨大なレイの顔(エヴァ・イマジナリー)に激突しようとしています。爆風に呑まれながら、「お母さんこれしかできなくて、ごめんね」と息子への言葉を遺す……。


ここでは「父」としてのゲンドウと、「母」としてのミサトさんが対比されています。あえて息子を遠ざける、という判断をしたのは二人とも同じですが、ゲンドウは自己愛から、ミサトさんは息子への愛から。

傷つきたくないという自己愛から、強くなる。強いフリをして、自分の弱さを人に見せられない。ミサトさんもかつてはそういう人でした。でも、弱い自分のことも加持が受け容れ、愛してくれたことで、息子を愛せる母親になれたのでしょう。

愛とは弱さを赦し、認めあうことなのかもしれません。そして、愛する誰かがいる人は、守るためにどこまでも強くなれる。

ミサトさんの「ガイウスの槍」は、「エヴァ・イマジナリー」を貫いて、シンジの元へ届きます。それは神ではなく、人が知恵と意志の力でつくった「意志の槍」。
ヴィレはドイツ語で、「意志」の意味。「愛する人を守りたい」というミサトさんやヴィレのメンバーの「意志」が、「知恵」を結集させて生みだした、「ほんとうの強さ」の象徴が、「ガイウスの槍」。

ミサトさんの「意志」を受けとるシンジ。それを見たゲンドウは、大人になったんだな、と言い、ついにシンジに謝ります。自分の弱さを認めたとき、ゲンドウはシンジの中に、ユイの姿を見出します。
「そこにいたのか、ユイ……」シンジは両親の愛の結晶です。ミサトさんが息子を愛したように、ゲンドウもシンジを愛していたならば、そこにユイの愛も感じとることができたはずでした。

ゲンドウはS-DATを片手に、電車を降ります。

救世主シンジによる、ネオン・ジェネシス(新しい創世記)。大切な記憶とともに、beautiful worldへ

ゲンドウと入れ替わるように車内に現れたのは、カヲルくん。「父さんの落とし前は僕がつける」と語るシンジ。シンジの成長に、カヲルくんは自分の役目が終わったことを悟り、「自分がシンジを幸せにしたかったのは、シンジを救うことで、自分が救われたかったからではないか」と述懐します。


カヲルくんは父さんに似ている」とシンジは言います。ゲンドウとカヲルはともに、自分を救うために行動していた、また「ピアノ」という点でも共通しています。シンジを愛せなかったというゲンドウの「罪」を、カヲルくんが代わりに償い、救われようとしていたのでしょうか。

次の場面は、13号機に取り込まれたアスカの回想。彼女も親の愛を与えられず、「エヴァに乗って、人に必要とされることだけが自分の価値」と考え、強さを志向し続けてきた人間でした。

独りでも傷つかないくらい、強くならなければならない。でも本当は、「ひとりはいや」。自分の弱さを受け容れて、寄り添ってくれる人を求めている。ミサトさんやゲンドウの面影が、彼女に重なります。

パペット(人形)で自分の寂しさを紛らわし続けてきたアスカ。そんな彼女の心象世界に、パペットの着ぐるみを着たケンスケが現れます。そのままのアスカでいいんだと、ケンスケはアスカの弱さを受け容れてくれます。


気づけばアスカは旧劇場版のラストシーン、世界にシンジとアスカ二人だけが残った、赤い海の浜辺に寝ています。シンジはアスカにこう言います。

「ありがとう、僕を好きだと言ってくれて。僕もアスカが好きだったよ」過去形。切ない……。この二人の関係の終わりは、エヴァという長い長い「思春期」の終わりなんだと思いました。アスカはエントリープラグとともに、ケンスケという「大人」の恋人が待つ現実世界へ、送り出されます。

場面が変わり、撮影スタジオでシンジとレイが向きあいます。二人の背景では、これまでのエヴァシリーズの映像が、壁に投影されています。ここでシンジは、エヴァという作品の「神」になっています。

神とは創造主、つまり監督です。だから撮影スタジオにいる。元々はゲンドウが自らの計画によって神になるはずでしたが、シンジがその役目を引き継ぎました。彼が創造主として、望むことは――

「エヴァのいらない、人が生きていける世界。ネオン・ジェネシス」

NEON GENESIS EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン。
ラテン語で、NEONは「新しい」、GENESISは「創世記」、EVANGELIONは「福音」の意味。

「創世記」は旧約聖書冒頭の、神がどのようにこの世界を創ったか、人間がなぜ楽園を追われたか、という起源のお話です。そして「福音」とは、キリストが人類にもたらす救いの「良き知らせ」のこと。

新世紀エヴァンゲリオンとは、シンジという救世主が、罪深い人類にどのような救いをもたらすのか、という新しい創世記

シンジは、人類の罪を「浄化する」のではなく、「弱さを認め、受け容れる」という救済を選んだのだと思います。アスカはまさにそうして、救済された。

シンジは初号機と13号機を槍で貫き、キリストのように自分を犠牲にして、世界を救おうとします。しかし、ここで初号機の中にいたユイが現れ、シンジのかわりに、13号機の中のゲンドウと、自分自身を貫きます。

寄り添う両親の姿に、見送られるシンジ。「父さんは、母さんを見送りたかったんだね。それが父さんの願った、神殺し」。ついに再会できたユイの傍らで、ゲンドウは安らかな顔をしていました。彼もようやく、救われたのでしょう。

初号機と13号機の死に導かれるように、すべてのエヴァが槍に貫かれて消え、真っ白な「エヴァ・インフィニティ」たちの群れも壊れて、人の姿になり、色をとり戻します。

「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」

世界に生命が蘇っていきます。第三村では、ペンギンたち(ペンペンの家族?)が、シンジのいた湖の見える廃墟にいます。青い湖、「生命」の水

シンジは海辺の砂浜にいます。そこへ8号機に乗ったマリが、約束通り迎えにきます。海から体を起こすマリ。滴る水、生き生きとした、生命力の塊のような絵。画面が白黒の線画に変わります。「エヴァのいる世界」が消えていく――

そして、新しい「エヴァのいない世界」に生まれ変わります。そこは駅のホーム。向こうのホームにはレイとカヲルくんがいて、こちらのホームの椅子には、スーツ姿のシンジが座っています(プラグスーツではなく、社会人が着るスーツです)。

そこへマリが現れ、シンジの首筋のにおいを嗅いで、「大人になったね」と言い、彼の首から、DSSチョーカーを外します。やっと首輪がとれた――シンジが大人の飼い犬である「ワンコくん」を卒業し、一人前になれたということでしょう。(おめでとう)


驚いたことに、シンジは声も変わっています。声優が緒方さんではなく、大人の男性になっているのです。エヴァの呪縛によって、ずっと十四歳だったシンジ。ようやく呪いから、解放されたのです。

二人は手を繋いで階段を上り、駅の外へ出ます。外の街並みは、アニメではなく実写です。現実の世界へ、二人は足を踏み出します。

エンドロール。ED曲は、『One Last Kiss』からの『Beautiful World』。

『One Last Kiss』では、「忘れたくないこと」、「忘れられない人」というフレーズがくり返されます。
「過去」になってしまった、愛しいものを想う歌。ユイを失くしたゲンドウのことが思い浮びます。


また、庵野監督や僕たち観客にとっての、「エヴァという物語」も、過去になろうとしています。

過去に縋ってしまう弱さがあってもいい。けれど、その弱さに引きずられて、ゲンドウのように自分の内に閉じこもり、楽園への回帰を願っていては、自分自身も、いま自分の周りにいる人も、愛することができなくなる。

過去になっても、記憶は残ります。人を愛し、愛されたという記憶を大切に抱えたまま――僕たちは、未来へ目を向けるべきなのではないか。

神になるのでも、架空の楽園へ逃げるのでもなく、人間のまま、人の生きる『Beautiful world』で生きていこう。ひとりじゃない。そこにはシンジたちも生きています。あなたも彼らと同じ、「Beautiful boy」のひとりなんです。

Beautiful world
It’s only love

――終劇――

庵野監督のメッセージを考察。「大人になる」とはどういうことか

エヴァは思春期の少年少女の心を繊細に描いた作品として、たくさんの人に支持されてきました。

しかし、人を強く惹きつける作品だからこその危うさもあります。エヴァの世界、そこで描かれる感情に共感しすぎて、抜け出せなくなる。

庵野監督はそれを理解していて、旧劇場版の時点で「オタクは現実に帰れ」という発言をしています。

ファンの中には、「エヴァに人生を狂わされた」とまで言う人もいる。庵野監督に人の人生を狂わせる意図なんてなかったでしょうが、大ヒット作品としての影響力の大きさを考えると、ある種の社会的責任を感じざるをえなかったのかもしれません。

これは、意図せずサードインパクトを起こし、たくさんの人を傷つけてしまったシンジの罪悪感と重なります。

庵野監督の分身であるシンジが、自らの罪とどうけじめをつけるのか――シンエヴァンゲリオンには、そういう物語の構図があります。

一言で言ってしまうと、「エヴァの呪縛から解き放たれて、大人になれ」で終わってしまうのかもしれませんが、僕が一番大事なメッセージだと感じたのは、「どうやって大人になればいいのか?」という「過程」の部分です。

その「過程」が、物語を通して丁寧に語られていました。頭ごなしに「大人になれ」と命じる、突き放すやり方ではなく、シンジとともに成長しながら、正しく教え導かれている。そんな気がしました。

「大人になる」とはどういうことでしょうか? 強くなること? 責任をとること

自分の意志で選択し、決めたことに責任を持つ」。それは作中でも語られていた、エヴァの大切なテーマです。強さとは、「意志の力」とも言えるでしょう。

しかし、それだけでは足りないんじゃないかと、僕は本作を観ていて思いました。

意志の強さなら、ゲンドウだって強いです。でもゲンドウは「良い大人」とは言えません。それは彼が、自分のために強さを求めたからです。自分が一番だから、他人は傷つけてもかまわない。それが賢い生き方なのだ……という、「間違った大人」の思想。

でも、その思想の先に待つのは孤独です。人を遠ざけ、孤独に蝕まれ、「強さ」だけが残る。だれにも弱さや苦悩を見せず、強さを至上の価値とし続ける。でもそれは、強さじゃなくて、「強がり」です。

ミサトさんやアスカも、かつてはそうでした。強がりでなんとか自分を維持していた。だけど、シンエヴァにおける二人は、愛されることで変わっていました。他者との接続、コミュニケーション。自分の弱さを受け容れてもらえたことで、人を愛し、「守るための強さ」を手に入れた。

ゲンドウの計画を倒す「カシウスの槍」は、「守る」という意志の強さです。それがほんとうの強さ。

シンジはその心を理解します。自分の心だけに閉じていたシンジは、第三村の人々や、レイ、アスカ、ミサトさんによって心を開かれ、彼女たちの心を理解し、学ぶことで、成長する

ゲンドウのように、自分の意志を一方的に押しつけるだけでは、間違った大人になってしまう

つまりシンエヴァでは、「自分の意志」というこれまでのエヴァのメッセージを発展させて、

「自分の意志を伝えた上で、他者との相互理解=コミュニケーションをはかる
そして、
「自分ではなく、愛する誰かのための、守る強さを手に入れる

それが「大人になること」だ、と伝えているのです。

「間違った大人」はゆるされないのか。『One Last Kiss』と、来場特典パンフレットのメッセージ。そして考察=物語はつづく……

シンエヴァンゲリオンは、「大人になるとはこういうことだ」という正しく前向きなメッセージによって、庵野監督がファンへの「けじめ」を示した作品です。

あえてこのコロナ禍に公開されたことにも、大きな意義を感じます。人々を励ます、希望に満ちた人間賛歌。現実的な話をすると、経済効果も大きいでしょう。偶然だとは思いますが、作中の汚染された赤い大地は、コロナウイルスに侵された現実世界にも重なって見えます。

でも、そんな本作の「正しさ」に、100%共感はできない、という人もいるのではないでしょうか。

取り残されたような寂しさ。僕も同じです。「自分はこんな、強く正しい大人になれる日がくるんだろうか……」と、弱い自分が惨めに思えてくる。

でも、思い出してください。シンジがゲンドウに向けた言葉を。
弱さを認められなかったからだと思うよ

そうです、シンエヴァンゲリオンは、弱さを否定しているわけではありません。むしろ「弱いままでもいいよ」、と言っているんです。

大切なのは、ひとりに閉じてしまわないこと。他者とつながること。最期に心を開けたからこそ、「間違った大人」だったゲンドウも、救われたのです。

シンエヴァンゲリオンには、僕たちの弱さやあやまちを包みこむ、やさしさがあります。

旧劇場版のころのように、庵野監督は「エヴァを捨てろ。現実に帰れ」と僕たちを突き放しているわけではありません。

『One Last Kiss』でくり返される、「忘れたくないこと」「忘れられない人」というフレーズは、「忘れなくていいよ」と言ってくれているように思います。

それに、白いプラグスーツ姿のアスカが描かれた、来場特典パンフレット(チラシ)も。
このパンフレット、開くと中に、本作に出てくる謎の用語がずらーっと並んでいます。

なんだこれ……と最初は思いましたが、これは「考察したかったら、好きなだけしてていいよ」という監督からのメッセージなのではないでしょうか。

エヴァは現代の神話です。神話はたくさんの人に語り継がれることで、広がり、生き続ける。エヴァはまさにそういう作品でした。散りばめられたたくさんの謎を、受け手が考察することで広がってきた物語

エヴァの世界に閉じこもり、自分の人生をないがしろにしてはいけない。

でも、エヴァを捨て去ってほしいわけでもない。

閉じこもるための物語ではなく、前に進むための物語として、語り継がれてほしい

現実世界も、エヴァという作品も、どちらも愛しつづけてほしい

それが、庵野監督の願いではないでしょうか。

僕は勝手にそう思って、考察を続けたいと思います。

そして、この記事を読んでくださった、みなさんの声も聞いてみたいです。

コメント欄を掲示板のように使ってくださっても、僕のTwitterアカウントへ直接声をかけてもらってもかまいません。

ご自分の考察でも、「このシーンが好き!」「この台詞が好き!」という感想でも、なんでもけっこうです。

そうして僕たちがコミュニケーションをとり、つながっていくことで、エヴァという物語は生き続け、どんどん豊かになっていきます。
相補性のある世界=互いに補い合う世界。

語りあいましょう。

さいごに

読んでくださって、ありがとうございました。

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ではまた。

↓マリ、ゲンドウ、冬月、ユイの母校である京都大学の記事

奇人・変人の巣窟、京都大学!クレイジーな京大生エピソード7選【よりどりみどり】

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