失恋ショートストーリーfrom『グッドラック』BUMP OF CHICKEN

失恋ソング

私はひとりでも平気な女だった。

大学生になるまで、だれとも付き合ったことはない。

大学受験は1回落ちて、1年浪人した。

同じ予備校の男子に告白されたけど、

恋愛のことなんか考えてる暇あったら勉強しろよ、

って思うくらいだった。

大学に入っても彼氏をつくろうとは思ってなかった。

私は変わり者だって言われるし、強気で、口も悪い。

男に弱みを見せられない、かわいくない女。

たまに寄ってくる男がいても、遠ざけた。

どうせこんな私を、ずっと愛してはくれないだろうから。

彼と付き合ったのは、どうしてだろう。

……やさしかったから。

見せかけのやさしさじゃなかった。

私の変なところも、強気なところも、おもしろいとか、

かわいいとか言って、ぜんぶ受けいれてくれた。

年下のかわいい男の子。おとなしくて、ひょろっとしていて、

頼りないのに、恋愛は私より知っていた。

毎日10回も20回も「かわいい」って言ってくるし、

キザなセリフもさらっと吐く。

けどマイペースで、連絡も会うのもほとんど私から。

夢中になってしまった。

大学の講義も、昼休みも、バイト帰りのちょっとした時間も、

彼で埋めないと気が済まない。

連絡はすぐ返す。彼のことばが欲しくて、ずっと待っている。

うっとうしいって思われるかな、と思う前に、

手が足が口が、動いている。止められない。

火がついてしまった。

彼がそばにいないときは、心が叫んでいた。

寂しい。寂しい。寂しい。

彼に気づかされた。私はずっと寂しかったんだ。

傷つかなくて済むように、封じこめていただけ。

彼がスッと手をつないでくるとき、

恥ずかしいフリをして払いのけたけど、ほんとうは怖かった。

つないだら、いつか離れてしまう。

なら最初から、つながなければ傷つかない。

そんな恐れも、付き合ううちに安心感に変わっていった。

大学4年間を彼と過ごした。いっしょにいろんな場所に行った。

たくさんの思い出ができた。

私は友達も少ない。

彼がいなければ、私の大学生活は色を失っていたかもしれない。

私たちは仲が良かった。ケンカは一度もしたことがない。

不満がないわけじゃなかった。でも、口にして嫌われるのが怖かった。

ずっとやさしい彼でいてほしかった。

すれ違いはじめたのは、お互い社会人になってからだ。

幸いにもお互いの社員寮は電車で一駅の距離で、

毎週会うことはできた。

けれど、お互い忙しくて、時間がなくなり、

疲れているなかで、ろくに外でデートもしなくなった。

私は会社が嫌いで、彼に愚痴を吐くようになった。

ある日彼が、「話題が愚痴ばかりで疲れる」と言った。

「じゃあなんか話してよ」と私。

彼は前から無口だったけど、最近特に口数が少なかった。

家にきても本を読んでいて、私を見てくれない。

悲しくて、腹が立った。

ある晩、彼と口をきかなかった。何を言われても無視した。

朝になると彼は、出ていった。

私は謝って引きとめようとしたけど、彼は行ってしまった。

連絡して、自分の気持ちを伝えた。「もっと話してほしかった」。

すると彼の不満が、爆発した。

愚痴を聞かされることだけじゃない、

私がからかうように口にする冗談にも、真剣に傷ついていたこと。

他にもたくさん。

ショックだった。私たちの信頼関係だと思っていたものは、

仲よしごっこだったの?

知らないところで、ずっと傷つけていた……

どうしていいかわからなくて、距離を置こうと言った。

ほんとうは今すぐ戻ってきてほしかった。

でも彼は、「わかった」と一言。それっきり。

別れてから、いろんなことに気づいた。

寂しさは敵だと思っていたけど、そうじゃないってこと。

寂しいと思うとき、私の心に君はいる。

そばに君がいなくても、寂しさとともに君を想うとき、

私はひとりじゃない。

君の手の温度を覚えている。いま、私の手にその温もりはない。

私の手は空っぽだ。

そうして君の手を思い出すときも、私の心に君はいる。

最後に私を見下ろした、君の瞳を覚えている。

私の家の玄関、君がドアを閉める前の最後の瞬間。

とても冷たい目だった。静かな怒り。

だけど君の瞳のなかには、寂しそうな私が立っていた。

私はなぜか、安心した。

この先、二度と会うことがなくても、この人の心に私はいるんだ。

そう思えたから。

誰にも言えないけど、よくひとりで泣いてるよ。

でも泣くたびにわかる。ひとりじゃない。

君が心にいるから泣くんだ。

君に出会っていなかったころの、ひとりで戦っていた私とは違う。

目をそむけていた自分の弱さを、認められるくらいには強くなれた。

涙が出るのは、その証拠でしょう。

だから、ちょっと時間はかかるかもしれないけど、

そのうち泣きやんで、前を向くよ。

君にもできれば、笑っていてほしい。

君は不器用で脆いけど、いざってときは行動力があるから、

なおさら心配だよ。

でも、傷ついても自分を信じて、進んで。心の望むほうへ。

私のことを思い出しても、心を痛めないでほしい。

それ以上、傷つかないで。

今、私の隣にいない君を、好きだなんて言うことはできない。

でも、君がどこかで生きているこの世界の、明日が好きだよ。

同じ明日を、私も生きる。

いつだって、ひとりじゃない。

君と出会って、そう言えるようになったんだ。

end

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『12星座の恋愛ポエム』牡羊(おひつじ)座 有朱(アリス) story1

『12星座の恋愛ポエム』シリーズでは、12星座をイメージした12人のキャラクターが語り手となって、

恋愛ポエム+ショートストーリーを語ります。

牡羊(おひつじ)座は3月21日~4月19日生まれ。

BUMP OF CHICKENのVo.Gt 藤原基央さんも、4月12日生まれの牡羊座です。

この物語は以下の楽曲からインスパイアされました

BUMP OF CHICKEN「グッドラック」

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